プロメアを見てめちゃくちゃに傷ついた話。

はい。タイトルの通りです。巷で連日満員御礼、総動員数50万人突破のめちゃめちゃ人気劇場版映画「プロメア」。流行りものにはそれなりの理由がある=おそらく良作。という図式により、予定の合間を縫ってレイトショーで見てきました。
この記事には批判しか書かれていませんので、作品を見て差別被差別構造の描き方に特に違和感を感じなかった、またはその違和感もさして気にならなかった方はUターンよろしくお願いします。ていうかわたしもみんなと同じようにドはまりして何度も映画館へ足を運びたかった!マイノリティーになんてなりたくなかった!!

  

ここからは感じた違和感と怒りを、順番に覚えている限り書いていきます。書きながら、違和感の言語化と怒りの鎮静を図りたい。怒ってるから誤字脱字多いと思いますが、その辺はご了承願います。ちなみにわたしはジェンダー差別問題に当てはめて見てました。

 

まず、リオたちバーニッシュの序盤の扱いについて。ガロは、被差別側であるバーニッシュたちを踏みにじりすぎではないですか?市民はみんな、バーニッシュが「30年前に突如発生した(ガロたちと同じ、)人間」だということを知っているんですよね?クレイによって情報統制がなされていた可能性は考えにくい、なぜならバーニングレスキューの面々が、バーニッシュそのものを悪だとは考えていないから。でも、ガロはリオの話を全く聞き入れず(まあこれは戦闘中だから仕方ないとも言える)、「燃やすことは悪、俺は炎があったら消火するだけだ」などといって完全成敗します。たしかに放火は悪、テロも悪。バーニングレスキューの仕事は消火活動。しかし前述のとおり、バーニングレスキューの仕事は「消火活動」なんですよ。フリーズフォースのヴァルカンの言う通り、ガロの行為は越権行為。ガロはガロの考える悪を自分勝手に成敗したに過ぎません。殺人犯がいた、殺人は悪事だからそいつも殺した、というような。消火が終わったのに、リオを成敗しようとし、実際流れで捕まえます。イグニスはガロを守ってくれましたが、ヴァルカンの様々な行為が悪であるということは別にして、ヴァルカンがこのとき言ったことは正しかったと思います。なんていうか、ガロの言動に全く正しさが感じられない。正義VS悪の構図を使うつもりであるはずなのに、主人公に正しさを持たせなくていいのか?制作側の伝えたいことがわからない。

 

ピザ屋のシーンでは司所が腐っていることが顕になるわけですが、テロを起こしてもいないバーニッシュが連行され(=不正逮捕)たあと、市民が「バーニッシュの焼いたピザなんか食べられない」と言うわけです。それに対して怒るガロ。ここにも疑問が残ります。自分に利益があるなら、普段差別しているバーニッシュでも特別扱いするわけです。これ現実の世の中にもはびこってる差別構造じゃん!でもこのことについてこのあと作中で触れられることはありません。なんだよ。被差別側の絶望を追体験させといて救いはないのかよ。むやみに傷つけないでくれよ。

 

さて、フリーズフォースによって連行されたリオ含むバーニッシュたち、予定通り脱出し、運悪く、ガロに見つかる場所へ避難します。炎を追い、銃を持って彼らに近づくガロ。そこで彼が見た光景は、年端もいかないケガをした子供たちでした。おとなしく火を囲んでいる、と、視界暗転。しばらくして目を覚ましたガロが言ったこと、しんどすぎてよく覚えていませんが、印象的な「バーニッシュもメシを食うのか?」というあさましすぎるセリフは耳に残っています。おまえ……バーニッシュをなんだと思っているんだ?バーニッシュも人間だ。人外発言を聞いてなお言葉だけで諭せるリオ、女神か?という感じですが、この演出も気に入りません。被差別側の主張は、冷静なふるまいの時でないと聞き入れない、という差別側に有利なフィルター。被差別側は、酷いことをされてもそれくらいで怒っている場合じゃない、主張を認めてほしくばいついかなるときでも冷静で在れ、そうでなければ弱者=マイノリティーの主張なんぞ聞き入れられないぞ、という現実世界にも存在する抑圧を、そのまま描いています。しかも、気づかれないように。もしかしたら、制作側も無意識に描いてしまったのかもしれません。リオの主張に説得力を持たせるためには、いついかなるときでも冷静であるように描かないと、と。でも、差別をテーマに作品を作っておいて、そんな甘っちょろい言い訳聞けるかよ。

 

 

少し飛ばして、リオ覚醒からの市庁(?)襲撃。ガロがリオを止めにかかるわけですが、おまえバーニッシュたちが燃料に使われてた事実見て怒ってたくせに、そこはとりあえず置いといてリオだけ責めんのか?「バーニッシュの誇りはどうした!」じゃねーーーよ非道なことしてる非バーニッシュの誇りはねーのかよクレイどうにかしてから言え!何様じゃ!リオの仲間を殺そうとしておいて、非バーニッシュは殺させないって、正気か?親を殺された奴に、犯人があとで裁かれる気配もないのに、親を殺されたからって殺しはよくないって本人に直接言ってるのと同じだぞ、いやまあ個VS個の話ならまだ目をつぶる、ファンタジーだしな、でもこの作品は明らかにそこの差別被差別構造をテーマにしてるよな?なんでリオばっかり我慢しなきゃいけないの?ガロの行為はクレイに加担してるのと一緒だよ。バカなふりしてどっちにもいい顔してんじゃねえよ。

 

ていうか「俺はバカだから」を主人公が免罪符みたいに使うのも心底許せない。無知は免罪符にならない。無知は罪だ。無知でいられるのはマジョリティ・差別側の特権だって、わかって描いてますか?制作陣。わからずに描いてたら失望するけど、わかって描いてたらもう一段許せないなあ!

 

最後の展開はアニメーションゴリ押しでストーリーはもうガバガバだったのである程度割愛します。リオに、被差別側に、「抑圧されても冷静で物わかり良くあれ」という烙印を押して終わったのが、結局プロメアの差別被差別構造ストーリーのまとめみたいなものでしたね。辛すぎて泣きました。救いがなかったね。あと、クレイがバーニッシュだった、というのを名誉男性の比喩に使おうとして、結局そこを回収しなかったのも腹立たしいです。差別問題をフィクションだと思ってない?クレイがバーニッシュだった設定、要らなかったよね。全然留飲下がらなかったけど。リオに色々背負わせすぎだよ。全く救わなかったくせに。

 

正義の名のもとに悪を成敗するのはセオリー通りの展開です。が、あとから「悪にも正義がある」というのを描くなら、そこまで痛めつける必要があったか?しかも最後までそのフォローがありませんでした。ただただ、マイノリティは抑圧されるが常、辛いね、という話ではありませんでしたか。何が描きたかったんだろう。最初から最後まで、とても辛かった。

 

終始辛かった話とイライラした点について書きなぐっただけの日記になってしまいました。もっと上手く言語化してくれる人いないかな。終わり。

 

追記:人の考察読み漁って、わたしは、容赦のないヘイト描写に対してフォローがなかったことに、悲しみ傷ついているんだなと気づきました。全体としてストーリーと設定が粗いのは、先に見た友人たちから聞いていたから。リオを守っているつもりなガロが一番、リオを度々絶望に追い込んでいることが許せなかったんだ……。あとピンクトライアングルのこと全く知りませんでした。収容所だなとは思ったけど。無知恥。